ビジネスマンなら身に付けておきたい会計スキル。こちらの記事は、その一つである「財務会計」について、基本的なスキルが身につくようにまとめたものです。初心者向けに分かりやすく、それでも実務で役に立つようなツボを押さえた解説を心がけています。
- 財務諸表とは何か知ることができます
- 財務諸表の基本的な読み方がわかります
目次
財務諸表とは
こちらでは、財務諸表とは何かご紹介します。
▼財務諸表を知るための3つのポイント
- 企業会計には「管理会計」と「財務会計」がある
- 財務会計で用いられる様式が「財務諸表(財務三票)」
- 財務諸表の入手方法
企業会計には「管理会計」と「財務会計」がある
そもそも財務諸表とは「企業会計」の一つとして区分されます。
ですから、まずは企業会計について理解を深めましょう。
企業会計とは
企業会計とは、企業に適用される会計の総称。
企業を運営するには、投資家や顧客など多くのステークホルダーを巻き込みます。
営利を目的としながらサービスを提供し、人々をより便利にしたり豊かにしたりするためです。
企業(会社)は、そのような「社会的な存在」だからこそ、企業内外に経営状況を発信する義務を背負っています。
そして、内外にそれぞれ発信する企業会計は、その方向性によって2種類に大別されます。
- 管理会計:企業内に発信するもの
- 財務会計:企業外のステークホルダーに発信するもの
管理会計とは
管理会計とは、企業内で管理する会計のこと。
ポイントとして「書式に縛りがない」という点が挙げられます。
なぜならば、管理会計とは自社のために作成する書類で、自社以外の誰かに見せるものではないからです。
▼管理会計はこんな風に使う
- 事業のやる・やらないを採択する基準として使う
- プロジェクトに回すべき適切な予算を計算する
- チームの評価として、業績を判断する
など
財務会計とは
財務会計は、企業外のステークホルダー(顧客や株主などの投資家)に向けて公開しなければならないものです。
ポイントは、管理会計と違って「書式に決まりがあること」です。
なぜなら、その企業の経営状況を判断する上で、それぞれの会社が独自の指標に基づいて計算をしていると、比較がとても難しいからです。
経営状態の良い悪いは、相対的に決まってくるものも大きいなかで、書式が決まっていると、その判断がしやすいですよね。
ここまでの説明で、財務会計に対して少しもどかしさを感じた方もいらっしゃるかもしれません。
企業からすれば財務会計は「独自の指標ではないからごまかしが効かない」わけです。
しかし、同じ書式の財務会計があることは、企業にとって大きなプラスでもあります。
というのも、自社が他社から比較・検討されてしまうのと同時に、自分たちも他社を比較・検討することができるからです。
例えば、自社で新規事業を始めるとき、市場にどんなライバルがいるか調査することもあるでしょう。
その際に、それぞれの会社が独自の指標(管理会計のようなもの)を出していたら、競争戦略を練ることが非常に難しくなります。
健全な競争原理が発生することは、顧客へのサービス向上に直結する点でも、良いことの方が多いのです。
▼財務会計はこんな風に使う
- 投資家が自社の経営状況を判断して投資するかどうか判断する
- 競合調査するときに、IR情報を閲覧する
- 顧客がサービス利用にあたって、健全な経営状況なのか検討する
など
財務会計で用いられる様式「財務諸表(財務三票)」
徐々に話を財務諸表にフォーカスさせます。
企業会計には2種類あり、そのなかでも企業外のステークホルダーに発信する会計が「財務会計」。
そんな財務会計は書式・雛形が決まっているという話でした。
財務諸表とは、その書式・雛形のこと。
企業の経営状態を外に発信する決まった様式、それが財務諸表です。
それ(=財務諸表)は3種類あります。
- 貸借対照表
- 損益計算書
- キャッシュフロー計算書
なんで3つもあるの?
他社と同じ様式で会計状況を記録していく財務諸表ですが、なぜ3つも用意されているのでしょうか。
1つの決まった雛形があれば、より比較・検討がしやすいと思いますよね。
しかし、それは難しいのです。
なぜならば、企業会計というのは非常に複雑で、1つの書式だけでは分析すべき観点の全てを盛り込むことはできないからです。
図形の投影図も、上から見た図、横から見た図、正面から見た図の3つが揃って、初めて、はっきりと立体を確認することができます。
それぞれの様式が、ある視点から見た企業の投影図、のように考えると良いでしょう。
貸借対照表
貸借対照表はパートが大きく左右に分かれています。
これで何がわかるかというと、「どう引っ張ってきたお金を(左側)」「どう運用しているか(右側)」が分かります。
そもそも、企業経営とは以下のようなフローで回っています。
- お金を引っ張ってくる(負債+資本)
- 設備投資をしてサービスを作る
- 営業・販売をして利益を生む
- 生まれたキャッシュを、お金を貸してくれた人に返したり、また設備投資に回したりする
…
つまり、ビジネスは「お金を引っ張ってくる」ところから始まると言っても良いのです。
その点で、貸借対照表はその最初の2段階、①引っ張ってきたお金と、②投資先を記録したものになりますので、ビジネスの源泉と言っても良いでしょう。
損益計算書
先ほど、企業経営のフローについてご紹介しましたが、そのなかでも貸借対照表はビジネスの源泉(始まり)を記録したものでした。
対して、損益計算書で記録している情報は、企業経営のフローでいうとその次の段階。
いわゆる、投資した資本でいくら儲けたのか、そのビジネスの結果を示しています。
その特徴として、損益計算書には5つの利益を記録します。
売上総利益
売上総利益とは「売上高ー売上原価」で求められる利益で、全ての利益の大元になるもの。
単純に、10,000円の商品を15,000円で売ったとしたら、売上総利益は5,000円です。
「粗利」と呼ばれたりする部分はこちらになります。
営業利益
営業利益とは、「売上総利益ー販管費(販売費及び一般管理費)」で求められる利益です。
例えば、仕入れてきた商品を在庫として保管しておくために使った倉庫の家賃や、販売するに当たってかかった人件費などを引いたものです。
こちらは、「本業による儲け」を表す指標として見られることが多いです。
経常利益
経常利益とは「営業利益+営業外収益ー営業外費用」で求められる利益です。
企業の本業以外で、生まれた収益と費用の差分をここで合算します。 「経常(ケイツネ)」とも呼ばれたりするほど、日本には馴染みのある利益ですが、それは2006年までは営業利益の公開が任意(義務ではなかった)だったことが背景にあります。
まずは、営業利益と経常利益をセットで見るようにしましょう。
税引前当期純利益
税引前当期純利益とは、「経常利益+特別利益ー特別損失」で求められる利益です。
こちらは、本業以外で、かつ突発的に入ってきた損益を合算した利益です。
この部分で極端な数字の動きがあれば、注意が必要です。
当期純利益
最後に当期純利益です。
こちらは、「税引前当期純利益ー法人税、住民税及び事業税」で求められるもの。
最終的に残るお金としてみなされます。
キャッシュフロー計算書
最後にキャッシュフロー計算書。
ここには、お金の流れの事実が記録されています。
昔は、貸借対照表と損益計算書のみ作成義務があったのですが、近年はこちらも財務諸表として組み込まれています。
キャッシュフロー計算書を合わせてみることで、貸借対照表や損益計算書では見えない「キャッシュの流れ」が見えてくるので、とても重要です。
キャッシュフロー計算書の書式は、3つのパートに分かれています。
順に「営業キャッシュフロー」「投資キャッシュフロー」「財務キャッシュフロー」です。
営業キャッシュフロー
企業経営をして、どれだけキャッシュを稼いだかが示されています。
通常であれば、出ていくよりも入ってくるお金の方が多いのが望ましいので、プラスであることが望ましいとされています。
投資キャッシュフロー
将来のために、どれだけキャッシュを投資しているかが示されています。
成長には投資が不可欠、という点で企業の成長ステージにもよりますが、基本的にはマイナスであることが望ましいとされています。
さらにいうと、営業キャッシュフローのプラスのなかでまかなえるマイナスであることが望ましいです。
財務キャッシュフロー
借りたお金をどれだけ返したのかが示されています。
企業経営をするに当たって、負債として借りていたお金は返した方が良いですよね。
そこで、営業キャッシュフローのプラスのなかで返済されている(マイナスになっている)ことが見えているのが望ましいとされています。
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まとめ
ここまで、財務諸表とは何か、その基本的な読み方についてご紹介してきました。
まず理解すべきなのは、企業経営のなかでも外に発信するためにある「財務会計」、それを記録する書式としての「財務諸表」である、という樹形図です。
その上で、3つある財務諸表の基本的な読み方を知っておけば、ビジネスの現場でコミュニケーションで困ることはないでしょう。