ジャズは「難しい」と思われやすい音楽ジャンル。ですが、それはジャズ奏者がそのスタイルをどんどん変えてきたから。つまり、ジャズの「スタイル(流行り)」を軸に人や曲を整理すれば、わかりやすくなります。こちらでは、100年以上続いてきたジャズ史のなかで、これだけは押さえておきたいおすすめの楽曲や人物をご紹介します。
- ジャズがどんな音楽かざっくりと掴むことができます
- 歴史と共に変わってきたジャズの「スタイル(流行り)」がわかります
- 初心者におすすめしたいジャズのおすすめ7曲がわかります
ジャズとはどんな音楽か
音楽には「ポップス」や「ロック」、「クラシック」など様々なジャンルがあります。
そのなかの一つである「ジャズ」には、どのようなイメージをお持ちでしょうか。
編集部のなかでも大半が、ややマイナスな印象……ですが、そのような方でも「聞きこなせたらカッコいい」と思っている方は少なくないはず。
こちらでは、ジャズという音楽がそもそもどういうものかご紹介します。
ブルースが根底にある
ジャズは、「ブルース」が変化したものとして理解されることが多いです。
ブルースが形を変えた他の音楽ジャンルに「R&B」もあります。
この名前(R&B)も、聞いたことがある人は多いのではないでしょうか。
では、いったい「ブルース」とはなんでしょうか。
ブルースとは、黒人に対する差別が行われていた時代のアメリカ南部で誕生した音楽と言われています。
当時、そこではプランテーションといって、白人が黒人奴隷を雇って過酷な労働環境のなかで大規模な農業経営が行われていました。
人として認められていなかった黒人たちが、その悲しみや怒りを歌で表現していたもの、それがブルースです。
悲しみの表現と言っても、クラシックとブルースでは大きく違います。
- クラシックは劇場的、ある意味で「現実感」はない
- ブルースは現実的、どこまでも「生々しい」
悲しみを表現するメロディは、クラシックにもいくつか思い浮かぶものがありますよね。
しかし、ブルースで表現する悲しみはクラシックのそれと大きく異なることが聞いてみれば誰でもわかるはず。
例えば、ブルースはクラシックにはない黒人ならではの独特なリズムが特徴的。
あとは、悲しさのなかに希望を見出すようにメロディが明るいこともあります。
素人目に聞いてみた印象の違いは、クラシックの悲しみはミュージカルで歌われるような感じ。
舞台の上で表現されるに相応しい分、ある種「非現実的な」感じも受けます。
対して、ブルースの悲しみはどこまでも現実的で、より生々しさを感じるのです。
アドリブを楽しむ
「ジャズに名演はあるが、名曲はない」。
野川香文『ジャズ楽曲の解説』
ジャズの楽しみ方の一つ、それが「アドリブ」です。
例えば、同じ曲でも演奏者によってその表現方法が変わることがあります。
同じ曲を同じ演奏者が演奏しても、アドリブが変わることもしばしば。
これがジャズの面白さとして捉えられているのです。
音楽を聞く焦点が、「演奏される曲」ではなく「演奏する人」に寄っていると言っても良いでしょう。
アルバムに同じ曲の別テイクが収録されていることからも分かります。
まず、ジャズ演奏には「テーマ」と言われる音楽が必要です。
テーマには大きく2つあり、「スタンダード」と呼ばれる既存のメジャーソングか、「オリジナル」と呼ばれるジャズミュージシャンの作ったまさにオリジナルソングです。
ジャズ演奏では、テーマの途中にアレンジを加えるというルールが原則あります。
ちなみに、有名なスタンダードのテーマ曲、『いつか王子様が』の曲構成は下記のようになっています。
- イントロ
- テーマ
- アドリブ部分
- テーマ
ここで、演奏者は前後の曲調に上手に繋ぎ込むように、そしてテーマ部分の倍数の時間尺という制限のなかで行います。
「こーあい」さん|あなたに合ったジャズを紹介します
自分に合ったジャズを紹介してくれるのが「こーあい」さん。
音楽の歴史のなかでは比較的浅い100年程度の歴史といえども、曲数で考えたらとてつもない数になります。
そのなかで、自分に合ったおすすめを紹介してくれたら、初めてのジャズでも聞いてみるのが楽しみになりますね。
ぜひ、チェックしてみてはいかがでしょうか。
ジャズの歴史|スタイルの変遷
ジャズは歴史とともに、その形を柔軟に変えてきました。
こちらではジャズ史のなかで、どんなスタイルが生まれてきたのかご紹介します。
スイング・ジャズ
1930’sくらいに流行ったスタイルです。
当時は、当時のポップソングのように位置付けられており、酒場でのダンスミュージックとしても使用されていました。
聞いているだけで体が揺れてしまうような曲、だから「swing(揺れ動く)」と呼ばれるようになりました。
ビバップ
1940’sくらいに流行ったスタイルです。
もともとスイングは、大所帯のバンド編成でしたが、ビバップでは少人数でそれぞれの個性を引き立たせるようなスタイルになりました。
アドリブの濃度が最も高い時期ともされ、聞き手も真剣に聞き込もうとする姿勢が必要です。
その分、演奏者の個性がまさに爆発していると言っても良いでしょう。
ハード・バップ
こちら、1950’sくらいに流行ったスタイル。
ビバップは、アドリブの濃度が高かったこともあり、ジャズを初めて聞く人がついていけないようなこともありました。
そこでマジョリティの評価を受けようと、ビバップを少し鈍化させ、ゴスペルの要素を加えたのがハード・バップ。
ビバップ時代に生まれたジャズ特有のアドリブ演奏が、音楽業界で確固たる地位を得るようになったスタイルということでまさに「ハード(堅い)」・バップと言われています。
ぜひ、この名前は覚えておくと良いでしょう。
生き方は破天荒だったとも言われていますが、ジャズに対する姿勢は紳士そのもの。
「いいプレイをする奴なら、肌の色が緑色の奴でも雇う」
このようなセリフも残っているほど、多くの人と新しいジャズを生み出し続けてきたので、彼を軸にジャズ理解しようとするのがむしろ今では主流となっています。
のちに紹介するモードジャズの代表アルバム『カインドオブブルー』は、全世界で1,000万枚以上を売り上げ、まさに「世紀の名盤」として聞き継がれています。
モードジャズ
こちらもハード・バップと同じく1950’sくらいに流行ったスタイル。
ビバップやハード・バップのように、コード進行の複雑性で個性を表現してきた流れとは打って変わり、シンプルなスケールチェンジのテーマ曲のなかに「本当の自由」を見出そうとしました。
ジャズを初めて聞いた方でも、シンプルに音が減ったように感じるでしょう。
その分、個々のアドリブに耳を澄ませることもできるので、まさにバーで流れているような「渋くてカッコいい」音楽とも感じるかもしれません。
フリージャズ/フュージョン
1960’sくらいから現代に続くスタイルです。
この時代から、ジャズ演奏は大きく2つの方向性に分かれます。
一つは、ジャズとしての芸術性を極めようとする玄人向けの演奏。
もう一つが、ジャズの大衆性を極めようとする素人にも分かりやすい演奏です。
その点で、フリージャズは玄人向け、フュージョンは素人向けと言ってもいいでしょう。
フリージャズは、ビバップのルネサンスとも言われるくらい、アドリブ要素の濃い音楽スタイルです。
対して、フュージョンは、当時流行っていた他のジャンル(ロック、ポップス)とのコラボ演奏をきっかけに、ジャズのメジャー性を高めようとした音楽スタイルです。
例えるならば、登録者数を増やそうとyoutuberがよく行う「コラボ」のようなものでしょうか。
コンテンポラリー・ジャズ
まさにコンテンポラリー(現代的)なジャズで、多様に変化するジャズを今ではこのように捉えるようになっています。
他のスタイルよりも聞きやすさを感じるかと思います。
「Mors2」さん|既存曲をジャズ風アレンジ
ジャズを聞いてみたいけれど、なんだか難しそうと感じた方は既存曲のアレンジから聞いてみるのはいかがでしょう。
自分の大好きなポップスでも、こちらの方はムーディにアレンジしてくれます。
友達や彼女とのお酒の場でも流せたらかっこいいですよね。
ジャズを聞くなら!初心者におすすめの7曲をご紹介
アメリカの歓楽街「ニューオリンズ」。
南北戦争の後だったこともあり、軍楽隊の楽器がそこら中にあったのでしょう。
音楽をまともに勉強していない黒人がそれを手にし、独自のテンポや音階で演奏を始めるようになりました。
これがジャズ誕生のきっかけです。
黒人が始めたジャズでありながら、西洋のブラスバンド中心の楽器が多いのはそのような歴史的背景があるのです。
こちらでは、おすすめのジャズをスタイルごとに7曲ご紹介します。
ジャズの初心者の方は、気に入ったスタイルから聞き慣れていくのはいかがでしょうか。
ペニー・グッドマン『シング・シング・シング』
スイング・ジャズの代表曲。
『シング・シング・シング』自体、多くの方にアレンジされているテーマ曲ですが、なかでも有名なのがペニー・グッドマン率いる楽団のものと言われています。
ちなみに、ペニー・グッドマンはクラリネット奏者で「King of Swing」とも称されるほどの腕前。
是非一度聞いてみてください。
チャーリー・パーカー『ジャズ・アット・マッセイ・ホール』
ビバップの代表曲。
当時、ビバップで有名な演奏者はチャーリー・パーカー、そしてペニーグッドマン。
彼らを中心とする鬼気迫る複雑なアドリブ、いわゆる「ビバップらしいビバップ」を聞けるのがこちらの楽曲です。
アート・ブレイキー『バードランドの夜』
親日家としても知られる有名なアートブレイキー。
「俺は黒人だぞ。一緒に写真に写ってもいいのか?」
と聞く彼をよそに、日本人のファンが彼に詰めかけたことに感動したという素敵な逸話も残っています。
さて、こちらはハード・バップの代表曲。
チャーリー・パーカーのビバップを聞いてからこちらを聞くと、よりその「聞きやすさ」を感じることができるはず。
しかも、その聞きやすさは「大衆に迎合した」結果ではなく、ビバップの「進化」によるものであるとわかるでしょう。
マイルス・デイビス『カインド・オブ・ブルー』
モード・ジャズとして、更にはジャズ全体にとって名盤とされるアルバムです。
なんと言っても、ジャズアルバムで1,000万枚を超える売り上げを当時挙げていたのこちらだけ。
こちらのアルバムは、ジャズのオリジナリティを残しつつ、それでも伝統的なスタイルを打ち壊し、しかもそれが大衆に受け入れられたという意味で、彼の功績はとても大きいものと言えるでしょう。
オーネット・コールマン『フリージャズ』/グローヴァー・ワシントン・ジュニア『ワインライト』
フリージャズとフュージョンでおすすめの楽曲を1曲ずつご紹介いたします。
オーネットの楽曲は、いわゆるフリージャズのなかでも「フリージャズらしいもの」ですが、確かにビバップの再来と言われるように聞き方に少し困る方はいらっしゃるかもしれません。
それくらい、個性が爆発しているのがわかるかと思います。
一方、グローヴァー・ワシントン・ジュニアの楽曲『ワインライト』は、「これがジャズなの?」とも思ってしまうほど、ポップスのように聞き流して楽しむことができます。
全米シングルのトップチャートにも食い込んだ大ヒット曲ですので、是非チェックしてみてください。
ラーシュ・ヤンソン『モア・ヒューマン』
コンテンポラリー・ジャズとして2016年に発売されたこちらの曲をご紹介します。
間違いなく、これまでご紹介した楽曲のなかでも最も聞きやすいかと思います。
イメージとしては、仕事終わりに、あるいは学校の授業終わりに聞くと良い感じ。
この曲が日頃の疲れを癒してくれるはずでしょう。
落ち着いた曲調で、ピュアのなかに温かみを感じるような、北欧スタイルのジャズとなっています。
「Toshiyuki Obata」さん|ジャズはやってみてこそ!
ここまでジャズの歴史やおすすめの音楽についてご紹介してきましたが、ジャズは聞くだけではなく、演奏してみることもまた楽しいものです。
なぜなら、ジャズの歴史自体が黒人たちーーそれも音楽理論も知らず、ましてや楽譜も読めなかった黒人たちが、自分の演奏したいように演奏してきて作り上げてきた歴史だから。
初めてジャズを演奏するという方は、「Toshiyuki Obata」さんが販売するジャズ教材がおすすめ。ぜひ、勉強してみてはいかがでしょうか。
ロック、ブルース、ジャズギターの教材お売りします 多ジャンルのフレーズをまとめて手に入れたいあなたに
まとめ
ここまで、ジャズについてご紹介してきました。
家にいる時間が長くなりがちな今だからこそ、家でどう楽しむかが重要。
そんなとき、普段とは違った音楽をかけてみると、家事や仕事が捗ることもあるかもしれません。
気になった楽曲があれば、ぜひ一度聞いてみてはいかがでしょうか。