個人事業主になる方、個人事業主の方で従業員を雇う方は社会保険への加入を検討しましょう。社会保険制度は国民の安心・安全な生活を保障するためのもので「医療保険」「年金保険」「労働保険」「介護保険」の4種類があります。こちらでは加入すべき社会保険を個人事業主という観点でご紹介します。
目次
社会保険とは何か【定義と種別をご紹介】
人生にはさまざまなリスクがつきもの。
リスクと上手に付き合いながら、安心安全な生活が送れるよう作られたのが、社会保険制度。
社会保険制度とは、あらかじめ想定し得るリスクに対して、みんなでお金を出し合い、実際にリスクに遭ってしまった場合に、必要なサービスを提供するというもの。
そんな社会保険制度は「どんなリスクに備えた保険か」という軸で大きく4つの種類に分類されます。
- 医療保険(健康保険):病気や怪我のリスクに備える
- 年金保険:高齢ゆえに働けないリスクに備える
- 労働保険:仕事で怪我をしてしまうなどのリスクに備える
- 介護保険:介護が必要になったときのリスクに備える
(参考:平成24年版厚生労働白書)
ちなみに、3番目の「労働保険」については、
- 失業のリスクに備える「雇用保険」
- 労働中の災害リスクに備える「労災保険」
の2つに更に分類されることもあります。
▼社会保険の種類【一覧表】
社会保険 | 医療保険(健康保険) | |
年金保険 | ||
労働保険 | 雇用保険 | |
労災保険 | ||
介護保険 |
【社会保険の種類①】医療保険(健康保険)
社会保険の種類の一つ、医療保険。
医療保険とは、国民全員の負担を下げながら適切な医療サービスを提供する制度です。
そんな医療保険は、「加入する(できる)人」という軸で3つの種類に分類されます。
- 共済保険
- 健康保険
- 国民健康保険
ここで、個人事業主の方が押さえておくべきポイントは2つ。
一つは、「基本的に個人事業主は国民健康保険に加入する」ということ。
もう一つは「5人以上の従業員を雇っている個人事業主は健康保険に加入する」ということ。
それでは、社会保険の一つである医療保険について詳しくみていきましょう。
【医療保険の仕組み】なぜ医療費は負担が少なく済むのか
医療保険には共済保険、健康保険、国民健康保険の3つの種類がありますが、保険制度の仕組みはどれも同じ。
医療保険は、大きく「3者のお金のやり取り」で回っています。
- 被保険者:病気や怪我をした人で医療サービスを受ける人たち
- 保険者:被保険者が保険料を払う機関で、保険料を払った証明として「保険証」が受け取れる
- 医療機関:病院など医療サービスを提供する場所
被保険者は保険証を医療機関に提示すれば、医療サービスを少ない負担で受けられます。
対して、医療機関は保険者に対して、医療サービスにかかった残りのお金を請求しています。
結果として、被保険者は原則「医療費の3割」を負担するだけで医療サービスが受けられるのです。
(例外として、義務教育就学前の子供は2割、70歳以上の方は所得に応じて1~3割負担)
【医療保険の種類】個人事業主はどの保険に加入すべき?
医療保険には大きく3つの種類があり、
- 共済保険→公務員や教員が主な対象
- 健康保険→企業に勤める会社員などが主な対象
- 国民健康保険→個人事業主などが主な対象
となっています。
もし、個人事業主の方で5人以上の従業員を雇っているというのであれば「健康保険」への加入義務が発生しますが、基本的には国民健康保険に加入すればOKです。
実は、健康保険とは2つの意味を持ってしまっているので非常に紛らわしいので注意が必要です。
- 社会保険の4種類のうちの一つ、年金保険や労働保険と並ぶ健康保険
- 医療保険の3種類のうちの一つ、共済保険や国民健康保険と並ぶ健康保険
【社会保険の種類②】年金保険
社会保険の種類の一つ、年金保険。
そんな年金制度は、よく2階建て構造(最近では3階建てともいう)と言われることもあります。
要するに、1階部分と2階部分の保険では種類が違い、より多くの保険に加入できるほど将来受け取れる年金額は増えるということです。
これを踏まえ、年金保険の仕組みと、個人事業主が加入できる保険の種類についてご紹介します。
【年金保険の仕組み】2階建て構造とは
年金保険制度は、2階建て構造になっています。
- 1階部分:全国民に加入義務のある「国民年金(基礎年金)」
- 2階部分:共済年金、厚生年金、国民年金基金など(加入しない人もいる)
- (3階部分:iDeCoなど)
最近、iDeCoのような新しい年金サービスが生まれたこともあって、3階建て構造と言われることもあります。
【年金保険の加入者】個人事業主は第一号被保険者
私たち国民は、年金保険の前では3種類に分類されています。
- 第一号被保険者:個人事業主など
- 第二号被保険者:会社員など
- 第三号被保険者:主婦など
個人事業主は基本的に第一号被保険者に分類されることを押さえておきましょう。
そして、第一号被保険者(個人事業主など)が加入できる年金保険は基本的に
- 1階部分:国民年金(義務)
- 2階部分:国民年金基金
の2つです。
ポイント①:国民年金基金とはなにか
第二号被保険者(≒会社員)の方は、2階部分の厚生年金に加入することができます。
厚生年金は年金サービスとしては非常に手厚く、厚生年金に原則加入することができない個人事業主の方と年金額に明らかな差が生まれてしまっていたので、作られた制度が国民年金基金です。
ポイント②:個人事業主は厚生年金に加入できないのか
ちなみに個人事業主が従業員を雇った場合、小規模事業者とみなされ厚生年金に加入することもできます。
厚生年金に加入すると、その保険料に国民年金の保険料が含まれるので、手続きは増えません。
こちら、給与所得に応じて、保険料と年金額は増えていきます。
【社会保険の種類③】労働保険
社会保険の種類の一つ、労働保険は更に「雇用保険」と「労災保険」に分けられます。
こちらでは、それぞれの保険制度について順にご紹介します。
【労働保険(1/2)】雇用保険
雇用保険とは、労働者を一人でも雇用した場合、加入しなければならない保険です。
これにより、従業員が失業したり、働き続けられない状況になってしまったときに給付金を受け取ることができます。
個人事業主の方は、条件に該当する従業員を1人でも雇った場合に、雇用保険に加入する必要があります。
雇用保険に加入すべき従業員の条件
- 1週間の所定労働時間が20時間以上
- 31日以上継続して雇用し続ける
専従者の雇用保険は?
個人事業主は、従業員だけでなく、いわゆる家族従業員「専従者」を雇っている場合もありますよね。
実は専従者は、基本的に雇用保険に加入することができません。
しかし、
- 全ての業務は事業主の指揮命令に従っていること
- 就業の実態や賃金が当該事業場における他の労働者と同様であること
- 事業主と利益を一にする地位(役員等)にないこと
上の3つの条件を満たせば、公共職業安定所に書類(「同居の親族雇用実態証明書」)を提出することで、専従者(家族)でも雇用保険に加入することができます。
【労働保険(2/2)】労災保険
次に、労災保険について。
こちらも雇用保険同様、個人事業主の方は、一人でも従業員を雇用した場合に加入する必要があります。
雇用保険と違う点は、雇用保険に設けられていた条件がないということ。
つまり、労災保険では従業員を雇用したらその時点で加入義務が発生するということです。
そんな労災保険とは、業務が原因で被害を受けた場合に、労働者ないしは遺族の方に給付を行う制度。
業務が原因だった場合、債務は事業主が担うであろうことは容易に想像できますが、事業主が責任をとることと同じくらい、「確実に補償が受けられること」を補填することも大切。
収益上補償が払えないということがないように生まれた制度として理解しておきましょう。
【社会保険の種類④】介護保険
最後に介護保険をご紹介します。
最も新しい制度
介護保険は、4つのなかでは最も新しい制度で、2000年から実施されるようになりました。
これは核家族化の進行や高齢化の進展により、介護ニーズが高まったことを背景としています。
保険の概要
シニア世代になるにつれて、脳梗塞などの病気やケガのリスクは高まります。
寝たきりになったり、身体が不自由になったりすると介護が必要になりますが、事前に保険料をみんなで払っておくことで、そのお金で介護サービスを受けられるのです。
実質負担が、サービス代金の1割で済むのですから、シニア世代には必要な制度といえるでしょう。
こちらの制度は、原則「年金」からの天引きとなりますので、何か特別な手続きが必要になるわけではありません。
(※5人以上の従業員を雇用すると加入義務が発生)
もっと詳しく知りたい!
ここまで、4つの社会保険制度についてご紹介してきましたが、個々の状況に応じて取れる選択肢や義務が変わってくることがご理解できたのではないでしょうか。
ただ「自分がどの状況に当てはまるかわからない」「もっと節約できるのでは?」と不安な方も多いはず。
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まとめ
社会保険の加入を検討されている個人事業主が、それぞれの状況に応じて最適な行動が取れるようになることを見据え、「社会保険の基礎知識」や「状況に応じて必要なアクションプラン」をご紹介してきました。
ポイントは、「本人だけ、あるいは5人未満の従業員を雇っている場合」か「5人以上の従業員を雇っている場合」の2つで大きく対応が変わってくるということ。
知識の吸収に止まらず、具体的な行動に移るきっかけになれば嬉しいです。
実際に加入したりや保険料の申告・納付の手続きをしたりする場合は、労働基準監督署で行うこととなっています。